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三流シェフ|読書ノート #109, 2023

読書ノート #109, 2023

■三流シェフ
 (三國 清三)

 

 

Takahiro
大波が来たら逃げるな。真正面からぶつかっていけ!
 

※ひとことPOPは書籍からの学び・気づきを想起するための個人的備忘です(^^)

2023.10.26 読了|Audible|2023年 109冊目


読んだ理由


新聞の書籍広告で見たときに、
若かりし頃の写真と近影を並べたビジュアルに惹かれたのと、
超一流といわれる方がなぜ「三流シェフ」なのか?
という疑問を持って、読もう読もうと思っていた本。

読後感想

幼少期から世界に名を轟かせるまでに至ったストーリーを
とても躍動的に、濃厚にグッと一冊に詰め込んだ自伝。

料理をいただいたこともないし、
オテル・ドゥ・ミクニがどこにあるかすら知らなかったが、
三國シェフの名はメディアを通じて知っていた。
恥ずかしながら、本書を読むまで、
三國シェフのお名前を清三(せいぞう)だと思いこんでいました…
大変失礼いたしました。

フランス料理のシェフということもあって、
恵まれた家庭に生まれ育ったようなイメージを勝手に抱いていたが、
本書を読み始めて、最初から完全に裏切られた。

北海道・増毛の漁師家庭に生まれ、極貧の幼少期を経て、
札幌での奉公で出会ったハンバーグから始まったストーリー…
好運と人に恵まれてステップアップし、
海外でフレンチの巨匠たちに学び、
日本に戻ってやがて「世界のミクニ」となっていく旅路を
ゾクゾクしながら追体験することができた

ただ単に運が良かったというのではなく、
まさに運をつかんだという表現が相応しい。
その背景には並外れた努力と行動力、
料理への尽きない情熱がもたらしたものだと思うと、
こうして確固たる地位を築いてこられたことにとても納得感があった。

どこを切り取っても興味深い話ばかりであったが、
なかでも印象的だったのは次の3つ。

Takahiro

✅ 寡黙な父が話した唯一の教え

✅ その世界の鍋を探す

✅ 恩師アラン・シャペルの言葉

 

中学校を卒業して就職するのはたった2人。

札幌の米屋で住み込みで働くことが決まり、
「お前には学歴はないけど、志はみんな平等なんだからね。」
と母が言ってくれた一言とともに、
大荒れの海で生き抜く術として教えてくれた
「大波が来たら逃げるな。船の真正面からぶつかっていけ!」
という寡黙な父の言葉。

その後ぶつかることになる数々の困難にあたって、
これらの言葉が行動指針となり、大きな励ましとなったはずだ。

まさに雑用から始まった「世界のミクニ」の料理人人生。

下っ端で料理を作らせてもらえないなら、
徹底的に鍋をきれいに洗って磨いてやる!
それを自らに課して全うしていくことで道が拓けた。

困ったときの拠りどころとして、
自分が力を注ぐべき対象を見つけること、
その世界の「鍋」を探すことで人生の突破口につながった。

必要とするシチュエーションは正反対だが、
豊田章男社長(当時)がバブソン大学で講演したときの
自分だけのドーナツを見つけよう
と通ずるような感覚を持った。

どちらも「探す」「見つける」という
主体的な行動が必要であることは言うまでもない。

「料理会のモーツァルト」ことフレディ・ジラルデのもと、
まさに戦場のような緊張感のある厨房で革新的なフレンチを学び、
のちに「料理界のダ・ヴィンチ」ことアラン・シャペルのもと、
対照的な雰囲気の厨房で、フレンチの腕を磨いていった。

魚料理を任されるまでになっていたが、
ある料理を見てシャペル氏が言った一言。
「C'est pas raffiné.」洗練されていない…
この言葉がずっと頭から離れなかったという。

その後、フランスでの修行を終えて日本に戻り、
日本の食材を取り入れながら、
自分らしいフレンチを創作し、念願の自分の店を構える。
やがてその評判が世界に届くまでになったある日、
シャペル氏が来店し、料理を堪能したあと直筆のメッセージを残した。
「フランス人シェフたちの料理を見事に”JAPONISÉE”(日本化)してのけた」と。

長い年月を経て、師からもらった言葉は、
フランス料理に自分の色をしっかり加えることができたという賞賛であり、
師に認められたという安堵感と揺るぎない自信で満たされたことだろう。

自ら問い続けて、前向きにチャレンジし続けていくことで、
自分が気づかないうちに、たどり着きたい場所に着いているのかもしれない。

本書では三國シェフの次なる挑戦についても触れている。

ミシュランが星をつけなくとも、
料理人としてのフランスで最高の勲章を得た人物が
その先に描いているイメージは
「もう一度、自分の身一つで料理と向き合いたい」

オテル・ドゥ・ミクニの閉店…
すでに完成されたもの、
確固たる地位を築いたものを壊してまで追い求める
飽くなき料理への好奇心。

自伝に触れたことで、その決断が何とも清々しく感じる。

本書を通じて、
好運に巡り合うためには待っているだけではだめだ、
自分から運をつかみとるための行動が必要だ
ということを強烈に印象づけられた。

時代が違うのは抜きにしても、
目標を見出してそれに向かって邁進していくというストーリーは
中高生にもオススメしたいくらいだ。

そんな濃厚な自伝に出会えたことに感謝。

心に残った一文

 

名前は明かせないけど、僕にはひとり憧れのシェフがいる。(中略)
…一軒の素晴らしいレストランを作り、そこの一軒の店で、ずっと料理と向き合ってきた。僕は、彼の料理も彼の生き方も深く尊敬している。(中略)
ただ唯一の心残りは、その人のように無心で料理に取り組んでこられなかったことだ。
(中略)
3年後に僕は70歳になる。そのときに、僕の新しい店「三國」を開店させる。
今度こそ、僕は僕のために料理する。
僕が憧れるその人の店を訪ねて、こう挨拶しようと思う。
「遅くなりました。僕もフランス料理を始めます。」

(最終章 Last 最後のシェフ「僕もフランス料理を始めます」)

この本から得た学び・気づき・実践したいこと

 

Takahiro
自分から運をつかみとるために行動する
 

 


 
書籍紹介

雑用こそ人生の突破口だ。
誰より苦労しても、その苦労を見ている人は1%にも満たない。
それでも“世界のミクニ”は必死に鍋を磨き続けた。

何者かになろうとして、懸命にもがく人たちへ――。
料理界のカリスマ・三國シェフ、感涙の自伝。

37年続いた「オテル・ドゥ・ミクニ」を閉じ、ぼくは70歳で新たな夢を実現する
北海道・増毛(ましけ)での極貧の幼少期、漁師の父と出掛けた海、“料理の神様”に近づきたくて生やした口髭、地獄の厨房とヨーロッパ修行、30歳での開業とバッシング、ミシュランとの決別――。時代の寵児と言われながら、がむしゃらに突っ走ってきたぼくが、一大決心をして「オテル・ドゥ・ミクニ」を閉店する理由と、ぼくが戦ってきた人生のすべて。

どんな一皿よりもエモーショナル!
世界に冠たる“ミクニ”の料理は、彼の苦悶の日々とパワフルで情熱的な生き様から作られる。
生きるための営みと企み、そして熱狂とは――。人生の本質が凝縮された1冊。

Amazon より引用)

著者紹介

三國 清三(みくに・きよみ)

1954年北海道・増毛町生まれ。フレンチシェフ。
中学卒業後、札幌グランドホテル、帝国ホテルで修行し、駐スイス日本大使館ジュネーブ軍縮会議日本政府代表部料理長に就任。その後いくつかの三つ星レストランで修行を重ね帰国。
1985年に東京・四谷に「オテル・ドゥ・ミクニ」を開店。
世界各地でミクニ・フェスティバルを開催するなど、国際的に活躍。
2013年、フランソワ・ラブレー大学より名誉博士号を授与される。
2015年、日本人料理人で初めて仏レジオン・ドヌール勲章シュヴァリエを受章。
2020年YouTubeを始め、登録者数約37万人の人気チャンネルに。
子どもの食育活動やスローフード推進などにも尽力している。

Amazon より引用)

ja.wikipedia.org


2023.10.26 読了|Audible|2023年 109冊目

 

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