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無敵の読解力|読書ノート #105, 2023

読書ノート #105, 2023

■無敵の読解力
 (池上 彰・佐藤 優)

 

 

Takahiro
読書を意味付けて「受験勉強≒読書」から脱却する
 

※ひとことPOPは書籍からの学び・気づきを想起するための個人的備忘です(^^)

2023.10.18 読了|所有本|2023年 105冊目


読んだ理由


「読解力」というワードに惹かれて古本屋で購入。
政治家にも歯に衣着せぬ発言でズバッと核心を突く二人が
書籍をどのように血肉として活用しているかを知りたくて読んだ。
本の帯に「本物の知性をなめるなよ。」となかなか高圧的な文言があり、
いくらか怖いもの見たさで手に取ったというのもある。

読後感想


現代社会の問題にズバッと斬り込める人たちのバックボーンには何があるのか?

その手がかりの一つが「読解力」というキーワードであった。

❝ 現代を生きる最重要スキルは読解力。
 それを身につける一番の早道は古典にじっくり取り組むこと ❞

つまり情報過多な時代において、
高速で物事を処理していくために読解力が不可欠である。
無意味で無駄な情報が蔓延っているネット情報によらず、
ふるいにかけられて成立している書籍、とくに古典で読解力を身につける。
これを軸として、古典を引用しながら仕事論、米中対立などを論じている。

まず、冒頭第1章の「人新世から見た仕事論」から、
両名の高い見識とそれを支える圧倒的読解力に舌を巻いた。

第1章で面白かったのが『ブルシット・ジョブ』の話。

例えば投資銀行コンサルタントの人たちは、
高額の給料で外からは一見憧れの仕事のように見えるが、
実際に働いている人は、何のためにこんなことをやっているのか?
と自己嫌悪に陥っている人たちもいる。

緊急事態宣言下において、
社会の存続に絶対必要なエッセンシャルワーカーの存在に改めて気づかされ、
その対極ともいえる「ブルシット・ジョブ」の人たちは
豊かな生活をしているようで、実は精神的には非常に虚しい。
搾取する側の人間も疎外された労働をしている。

もちろんすべてが全てではないと思うが、
高い報酬で「ブルシット・ジョブ」の人材を確保しようとしている企業の姿が
どこか滑稽に思えて仕方がない。
(これは自らのルサンチマンの可能性は否定できないが…笑)

それはともかくとして、
このような話から、普段聞き慣れない
マルクス疎外論・窮乏化論、ディープ・ステート、メリトクラシー
など様々な話題に紐づけて話が展開していく。

目の前の問題と古典など書籍からの学び・気づきを紐づけて考えることで、
その問題を可視化、構造化しやすくする流れというのは参考になる。
もちろん、真似をしようとも容易ならざるものであるのは言うまでもないが…。

次に、この本の功罪のひとつ、副作用として注意すべき点を記したい。
それは「自信を失くしたり、必要以上に自らを卑下しないこと」…苦笑
第4章の「愛読書から見るリーダー論」を読んで感じたことである。

時の総理大臣や経験者、野党党首など政治家の愛読書を取り上げて、
浅い、空虚、頭の中がお花畑…だと容赦なくバッサリと斬り捨てている(笑)

無敵の読解力をもつ二人が、
学術書や古典を読まない政治家の知的レベルの低さを嘆いている様子から、
国民の代弁者たる政治家と、一般人を同列で比べる必要はないけれど、
これまで古典に触れてこなかった過去の自分を一瞬責めてしまった。

だが、その責めを和らげてくれる場面があった。
佐藤氏が「官僚には読書家が少ない気がする」と述べ、
その理由を受験勉強と紐づけて話している箇所がある。

「受験勉強がニアリーイコール読書ということになってしまって、読書にはあまり意味を求めない」

(もちろん官僚でもなんでもないが…)
受験勉強や大学卒業してからはほとんど古典に触れることなく、
現在進行のものに注力していた自分の姿が重なって、
妙に納得感があった。

それもあってか、
マルクスの説く疎外論と窮乏化論への興味や、
GHQ占領政策のベースにした日本人論『菊と刀』など
読んでみたい古典が増えた。

さらに、一冊の本を読んで満足しておしまいではなく、
古典を含む複数の書籍を読んで得た横断的な知識や気づきをもとに
目の前の問題にピントを合わせて理解を深め、対処していく。
情報過多の時代に必要とすべき情報を漏らさないためにも、
改めて読書を活用して、読解力を身につけていきたいと思う。

心に残った一文

 

[佐藤] 官僚は基本書を何度か読んで暗記して、それを運用する能力を問われるから、それが読書の基本形になっちゃうんじゃないかな。(中略)
国家公務員試験に受かった人には、読書家が少ないような気がします。
[池上] それは受験勉強的なものは得意だということですか。
[佐藤] そうなんです。受験勉強がニアリーイコール読書ということになってしまって、読書にはあまり意味を求めない。それよりも現場主義的で、生の現場の情報なり、生の現場でやっている人の報告書の方が、読書よりも価値があると考えてしまう。

(第4章 愛読書から見るリーダー論-■政治家と官僚の低学歴)

この本から得た学び・気づき・実践したいこと

 

Takahiro
必要なものをすくい取るために読書を活用する
 

 


 
書籍紹介

最強のコンビには何を語ってもらっても面白い。
今回は、各章で3~4冊の書籍を参考資料にして、現代社会を縦横無尽に斬りまくる。
まず、第1章のテーマは「人新世から見た仕事術」である。
ここでの参考図書は、斎藤幸平『人新世の資本論』、グレーバーの『ブルシット・ジョブ クソどうでもいい仕事の理論」、それから白井聡『主権者のいない国』の3冊。
斎藤氏が切り拓いた、新しい『資本論』からの視点と、「クソどうでもいい仕事」から、リモートワークの現在や、仕事そのものと資本主義について考える。
第2章は、「米中対立 新冷戦か帝国主義戦争か」というホットなテーマを取り上げる。(中略)
第3章では、「なぜオリンピックはやめられなかったのか」を分析する。(中略)
第4章のテーマは「愛読書から見るリーダー論」。日本の歴代首相、党代表は一体、どんな本を読んできたのだろうか。(中略)
第5章では「日本人論の名著を再読する」を論じる。参考書はルース・ベネディクト菊と刀』、オフチンニコフ『桜の枝』、ライシャワー『ザ・ジャパニーズ』。日本人は外側から見られた日本人論が大好きだ。この三冊が名著と呼ばれるにはそれだけの理由がある。『菊と刀』は戦後日本のグランド・デザインをつくるベースとなった点が重要だ。さらに、外部の視点から書かれた日本人論は、私たちが気づかない点を突き付けてくれる。制度や経済状況などによって変わった点はもちろんあるが、いま、わざわざ読み返してみる価値を詳述する。

Amazon より引用)

著者紹介

池上 彰(いけがみ・あきら)

ジャーナリスト。1950年、長野県松本市生まれ。
慶應義塾大学卒業後、1973年にNHK入局。
1994年から11年にわたり「週刊こどもニュース」のお父さん役として活躍。
2005年よりフリーに。今さら聞けないニュースの本質をズバリ解説。テレビでも大活躍中。

佐藤 優(さとう・まさる)

作家・元外務省主任分析官。1960年東京生まれ。
同志社大学大学院神学研究科修了後、外務省に入省し、在ロシア連邦日本国大使館などに勤務。その後、本省で主席分析官として活躍。
2002年背任と偽計業務妨害容疑で逮捕・起訴。09年有罪確定(懲役2年6ヵ月、執行猶予4年)。13年に執行猶予期間を満了し、刑の言い渡しが効力を失った。

主な著書に『国家の罠』『自壊する帝国』『読書の技法』など多数。

Amazon より引用)


2023.10.18 読了|所有本|2023年 105冊目

 

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