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もひとつ ま・く・ら|読書ノート #108, 2023

読書ノート #108, 2023

■もひとつ ま・く・ら
 (柳家 小三治

 

 

Takahiro
好奇心が噺に魅力をもたせる
 

※ひとことPOPは書籍からの学び・気づきを想起するための個人的備忘です(^^)

2023.10.26 読了|図書館本|2023年 108冊目


読んだ理由


落語を聞き始めて間もない私が、
立川談慶師匠の書籍(読書ノート#96)などを通じて
「まくらの小三治」こと十代目柳家小三治師匠の逸話を知り、
ぜひ読みたいと思った本。

ja.wikipedia.org

読後感想


本書は、寄席や講演などで話した小三治師匠の「まくら」を
そのまま文字に書き起こしたもの。
「えー」「んー」といったケバもそのまま表現されているので、
まさに師匠の息遣いを感じながら、じっくりと読んでみた。

読んだ率直な感想は
「本編に入る前によくこんなに喋れるなぁ」笑。

あらかじめ話す内容を準備しているというよりも、
その場の雰囲気や自身の心境などを踏まえて、
自由闊達にして、話題に富んだまくらで観客を楽しませている印象を受けた。

 

Takahiro
再現性があり予想ができる「古典落語」と
即興性で先が予想できない「小三治まくら」
 

いわばジャズのような即興性で話を広げたり収束させたりと、
聴いている側は「どんな話に展開していくのか」と
結末が読める古典落語とは違った楽しみを感じる。
(と同時に、いつ話が終わって落語を聴けるのだろう?という不安も…笑)

多趣味で飽くなき好奇心を背景に、
どんな頭の回転の良さをもって、
その場で話を構築していったのだろうかと、大変興味深い。

そんな小三治師匠が
「あたしは落語家ではなく噺家
と仰っているのが印象的だった。

収録された21のまくらのうち、
個人的に惹かれたのが『笑子の墓』『パソコンはバカだ!!』

前者は、
ボウリング場で出会ったうら若い女性が
いきなり「落語をやってください」と話してきたことから始まる話。
その奇縁あふれるエピソードは、
それだけで落語や小説にできそうな展開に惹き込まれた。

後者はただただ可笑しいの一言。
今から20年ほど前の話で、
デジタルカメラを買うところからパソコンを買う羽目になった師匠。
それに振り回されてしまう師匠の姿を滑稽に表現し、
パソコンに対して悪態をつくところは思わず声を出して笑ってしまった。
(電車内で少々気まずかったが…笑)

生成AIが幅を利かせてくるであろう時代に、
果たして師匠はどんな話題を提供してくれただろうか、
どんな視点でちくりと皮肉をいってくれただろうか、と
考えさせてくれるところがある。

人間国宝までなられた稀代の噺家
まくらと落語を聴いて、秋の夜長を過ごしてみよう…そんな気分になった。

心に残った一文

 

いろいろやってみてわかりましたけど、パソコンはバカだっていうことです(笑)。
どうバカかっていうと、パソコンはね、言われたことしかわからない。
(中略)
われわれ人間はね、一を知って十を知るっていうことがあります。(中略)パソコンは何もわからねぇ。あれはバカの塊です(笑)。
一を知ったら一しか知らない。いわれたことしかわからねぇ。そのかわり、あたりよりすぐれているとこはたった一つ。一度覚えたら忘れないってこと(笑)

(パソコンはバカだ!! 松戸音響独演会 2000.9.3 『かぼちゃ屋』枕)

この本から得た学び・気づき・実践したいこと

 

Takahiro
日常に噺のネタが埋もれている
 

 


 
書籍紹介

「いやぁオカシイ、笑いどおしです」――小沢昭一

お待たせしました!小三治まくら。
出演料代わりにマタギから手に入れた熊の胆(い)に始まり、
芸者屋の娘・笑子との切ない、数奇な縁(えにし)、句会、パソコンはバカだ!!まで、
いよいよ面白く、辛口で温かい長短21編。再度、ご機嫌伺います。
少しお高い枕ですが読み心地抜群。人生の滋味あふれるスーパーエッセイ、お楽しみの程を

Amazon より引用)

著者紹介

柳家小三治(やなぎや・こさんじ)

1939年東京都生まれ。本名・郡山剛蔵。落語家。
’55年都立青山高校入学、落語研究会に入部。「しろうと寄席」で頭角をあらわす。
浪人中、両親の反対を押し切り、’59年柳家小さんに入門。’69年真打ち昇進、10代目小三治襲名。
以来古典落語の本格派として活躍。’81年芸術選奨文部大臣新人賞受賞。
オーディオ、クラシック音楽、バイク、俳句など多趣味。
現在落語協会理事。面白い落語を目指し奮戦中。
著書に『ま・く・ら』『小三治名席』など。近々『落語家論』を刊行予定。
(追記)2014年 重要無形文化財保持者(人間国宝)認定、2021年逝去

Amazon より引用)


2023.10.26 読了|図書館本|2023年 108冊目

 

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