息吹|読書ノート #112, 2023
読書ノート #112, 2023
■息吹〈Audible Original〉
(平野 啓一郎)
※ひとことPOPは書籍からの学び・気づきを想起するための個人的備忘です(^^)
2023.11.2 読了|Audible|2023年 112冊目
読んだ理由
比較的短時間で読める小説を探していたところ、
Audibleオリジナルの本作を見つけた。
平野啓一郎さんの作品はこれまでに読んだ記憶がないので、
ちょうどよい機会だと思って読んだ。
読後感想
当たり前の日常からひょんなことで分岐して…
自ら妄想して作り上げたパラレルワールドと現実との境目が曖昧になり…
それが家族を巻き込み…
最後のモヤッと感も含めて
「今ある現実とは何なんだ?」ということを考えされられた。
…というのも、自分自身が過去に
いくつもの分岐点からパラレルワールドを作ってしまい
苦悩した日々を送った経験があるだけに、
自分の過去をなぞりながら
息吹たちの苦悩を感情を持って追体験した気持ちだった。
第三者から見たら「何を言っているんだ?」ということも
本人にとってはとても深刻なもの。
「言っても仕方がない」と思って自分で抱え込んでしまったら、
ネガティブな妄想がドツボにはまってしまう。
感情移入したら正直疲れるだけだが、
本作を楽しめるかどうかは、
どこまで主人公と自分を同一化できるかだと思う。
内容もそうだし、最後はモヤッと感の残る終わり方なので、
好き嫌いが分かれそうだが、
個人的には、色々考えさせられた点で読んで(聴いて)良かった。
近い将来、メタバースなど仮想空間において、
もう一人の自分が違う人生、いわば自由な人生を
送れることになるかもしれない。
それだけに改めて目の前の現実世界をしっかり味わう大切さを感じた。
現実世界において、家族にしろ、環境にしろ、
当たり前に感じていることのなかに、
感謝できることは多い気がする。
心に残った一節
絵美「あの時かき氷屋に入ったかってどうかって、そこだけが人生の分岐点じゃないでしょ!(中略)…息吹の人生だけでも偶然の可能性を考えだしたら無限なのに、それが世界中の人全員に言えるのよ。一人ひとりが皆、無限の偶然の可能性に生きていて、そのそれぞれの組み合わせを全部考えだしたら、一体いくつパラレルワールドが必要なの?」
(チャプター 20)
この本から得た学び・気づき・実践したいこと
書籍紹介
「かき氷屋が満席だったかどうかで、生きるか死ぬかが決まる人生って、何なんだろう?
そういうものなんだろうか? 人の一生って、そういう偶然の積み重ねなの?」
とある夏の日、
中学受験を控えた一人息子を模試会場に迎えに行った齋藤息吹は、
勘違いから、自分が一時間も早く到着してしまったことに気がつく。
時間つぶしに入ろうとしたかき氷店は満席。
仕方なく、十数年ぶりに入ったマクドナルドで、
隣の席から聞こえてきた気懸かりな会話に、彼はにわかに不安を募らせてゆく。
些細な偶然から、間一髪のところで命拾いをした夫の興奮を、
戸惑いつつ、安堵とともに受け止める妻の絵美。
しかし、その日から家族の平穏な日常は、
少しずつ、「もう一つの別の日常」によって急速に浸食されてゆく。
精神と肉体の危機を潜り抜けた先に、家族を待ち受けていた衝撃の結末とは?
現実と非現実の境界を行き来し、
読者を新しい認識へと導いてゆく、平野啓一郎の怪作。
(Amazon より引用)
著者紹介
平野 啓一郎(ひらの・けいいちろう)
1975年、愛知県生まれ。小説家。京都大学法学部卒。
1999年、在学中に文芸誌「新潮」に投稿した『日蝕』により第一二〇回芥川賞を受賞。
以後、数々の作品を発表し、各国で翻訳紹介されている。
(Amazon より引用)
2023.11.2 読了|Audible|2023年 112冊目
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