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銀の匙|読書ノート #115, 2023

読書ノート #115, 2023

銀の匙
 (中 勘助)

 

 

Takahiro
❝人は愛情を受けて成長していく❞
 

※ひとことPOPは書籍からの学び・気づきを想起するための個人的備忘です(^^)

2023.11.8 読了|図書館本|2023年 115冊目


読んだ理由


「灘校伝説の教師」の橋本武先生の授業で有名な『銀の匙』。

学生の頃には全く触れることはなく、
ちょっと前までは漫画『銀の匙 Silver Spoon』と混同していたくらい(汗)

この1年で本に触れる機会が増えて、
おすすめの1冊として『銀の匙』が紹介されていることを数多く目にした。
齋藤孝先生の特別授業「100分de名著」を読んだこともあり、
ぜひ読みたいと思っていた本。

読後感想


舞台は明治時代…今から110年ほど前の話だが、
当時の日常風景を目の前に映し出せるほど写実的な文章が印象的

子供目線で情景と感情が仔細に描かれ、
雑味なく全てを語り尽くしている感じがあり、
行間を意識せず先へ先へ読み進めていった。

子どもの遊びや当時の風習など、
意味がわからないことはたしかに多かったが、
あくまでそれは舞台装置に過ぎない。
主人公が人との付き合いを通じて、
感情が波立ったり、満たされたりしていく
心の移り変わりを見守りながら読み進めた感じであった。

よくよく振り返ったら、
本書のなかにカタカナが出てこなかったような気がする。
純粋に日本語のみで美しく書かれていることを思うと、
やれアジェンダだ、エビデンスだ…と
カタカナ語」を使って気取って会話をしている姿が
何とも滑稽に思えてきた。
自分もそうなっていないか気をつけよう(笑)

 

さて、本作品は前編と後編と分かれており、一章一章はとても短い。
病弱に生まれ伯母さんの大きな愛情を一身に受けて過ごし、
同性とは張り合いながら、
お国さんやお蕙ちゃんと友情(淡い恋)を深めては別れを重ね成長していく。

とくに印象的だったのが伯母との久々の再会

信心深くて人の良い伯母さんは、学はなくとも色々教えてくれたり、
好きな所に連れて行ってくれたり、好きなことをさせてくれた。
伯母さんがいないと何一つできなかったひ弱な主人公は、
やがて学校でも首席をとるくらいに成長した。

一方で、何年か前に生まれ故郷に戻った伯母。

旅の帰りに伯母を訪ねたが、年老いた伯母は主人公に気づかない。
ようやく気づいた伯母が涙を流して、拝まんばかりに対面する。

精一杯料理を振る舞い、夜には風邪をひかないかと心配する伯母。
朝早く出発した主人公を、門の前に立っていつまでも見送っていた伯母。

逞しくなった主人公とは対照的に老いて衰えた伯母。
そんな伯母が主人公の姿を最後まで目に焼き付けようとする様子
何とも心を打った。

今は亡き祖父母の姿を思い出すようで、読みながら涙が込み上げてきた。
この後編の十六、十七はおそらく一生忘れることはないだろう。

親の愛情に深く感謝しながら、
我が子にも注いでいってあげたいと思う。

そういえば最近は世話好きな人が少なくなったなぁ…。

心に残った一節

 

…伯母さんの体のことも気づかって間もなく床についたが、伯母さんは お阿弥陀様に御礼を申しあげる といって、お仏壇のまえに敬虔に坐って見おぼえのある水晶の数珠を爪繰りながらお経をあげはじめた。ちらめく蝋燭の光に照されて病みほうけた体がひょろひょろと動くようにみえる。四王天清正の立廻りをしてくれた伯母さん、枕の抽匣(ひきだし)から目ざましの肉桂棒をだしてくれた伯母さん、その伯母さんは影法師みたいになってしまった。(中略)
 話はいつになっても尽きそうになかったが私は程よくきりあげて眠りについた。私たちは互に邪魔をしまいとして寐たふりをしてたけれども二人ともよく眠らなかった。翌朝まだうす暗いうちにたった私の姿を伯母さんは門のまえにしょんぼりと立っていつまでもいつまでも見おくっていた。
 伯母さんはじきになくなった。伯母さんはながいあいだ夢みていたお阿弥陀様のまえに坐ってあの晩のような敬虔な様子で御礼を申しあげてるのであろう。

(後編 十七)

この本から得た学び・気づき・実践したいこと

 

Takahiro
親からの愛情を決して忘れず感謝する
 

 


 

書籍紹介

なかなか開かなかった茶箪笥の抽匣(ひきだし)からみつけた銀の匙
伯母さんの無限の愛情に包まれて過ごした日々。少年時代の思い出を中勘助(1885-1965)が自伝風に綴ったこの作品には、子ども自身の感情世界が、子どもが感じ体験したままに素直に描き出されている。
漱石が未曾有の秀作として絶賛した名作.改版.(解説=和辻哲郎

Amazon より引用)

著者紹介

中 勘助(なか・かんすけ)

明治18年東京生まれ。東京帝国大学文学部英文科卒業。
文壇から距離を置き、孤高の姿勢を貫く。
明治43年に執筆した『銀の匙』前篇は夏目漱石に「子供の世界の描写として未曾有」と絶賛され、東京朝日新聞に連載される。

Amazon より引用)

 

ja.wikipedia.org


2023.11.8 読了|図書館本|2023年 115冊目

 

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