常設展示室|読書ノート #106, 2023
読書ノート #106, 2023
■常設展示室
(原田 マハ)
※ひとことPOPは書籍からの学び・気づきを想起するための個人的備忘です(^^)
2023.10.22 読了|所有本|2023年 106冊目
読んだ理由
これまでの人生でさほど関心を寄せることのなかったアート。
その興味の入り口に立たせてくれたのが原田マハさんの作品であり、
次の作品を読みたくなったので、古本屋さんで物色して購入。
読後感想
これまでに読んできたマハ作品は、
『楽園のカンヴァス』『暗幕のゲルニカ』『たゆたえども沈まず』といった
画家自身にまつわるストーリーだったこともあり、
この短編集は自分にとっては新鮮であった。
加えて美術館スタッフ、ギャラリーのディレクターや芸大教授、
そんな「本職」たちを描いた短編の中に、
なぜアートとは程遠いバツイチ派遣社員が主人公に…?
と不思議に思っていたら、
最後は絵画で回収するところはさすが裏切らない。
本書の6つの短編のうち、『群青』と『道』にグッときた。
『群青』
五感の一つを失っていく不安を前に、
出会ったある子どもの姿を通して
アートを見る情熱を失っていたことに気づかされたり、
かつて子どもの頃に見たときに感じたことを思い出したり。
子どもに立ち返って見ること…
純粋にアートに向き合うとはそういうことなのかもと思う。
『道』
主人公の翠が提案した芸術大賞の審査方法、
氏名・題名・経歴といった情報を伏せることで、
人で審査するのではなく、作品で審査するということに共感を抱いた。
そして不思議と翠の心を捉えた作品が…というストーリーは
自分の「直感」を大切にしようというメッセージだと受け取った。
どうしても人は権威あるものに弱い。
名の通った作品だから、あの画家だから…という先入観を持ちすぎず、
目の前のひとつの作品を、ぜひ肩の力を抜いて楽しんでみたい。
権威付けされた作品を恭しく見る以外に、
たとえ名もなき作品であっても心を打たれるものはあるはず。
他人の評価とかは関係なしに、自分自身がどう捉えるか…
そんな境地でアートを楽しめるようになれたら、
自分の「趣味」が増えることになりそうだ。
心に残った一文
「お父さんのあの絵…最後に、私が塗ったんです。(中略)…お父さんに秘密で、私が塗りました」
ごめんなさい、ごめんなさい。(中略)
わざとそうしているとしか思えないほど、ひどく下手な塗り方だった。けれど、だからこそその部分は輝いていた。(中略)
「あの絵…失格なのでしょうか」
西川教諭が、残念そうな声を出した。翠は首を横に振った。
「傑作です」
そう言った。
(道 La Strada)
この本から得た学び・気づき・実践したいこと
書籍紹介
ゴッホ、ピカソ、フェルメール。6枚の絵画と人生が交差する傑作短編集。
いつか終わる恋をしていた私。不意の病で人生の選択を迫られた娘。
忘れられないあの人の記憶を胸に秘めてきた彼女。
運命に悩みながら美術館を訪れた人々の未来を、一枚の絵が切り開いてくれたーー。
足を運べばいつでも会える常設展は、今日もあなたを待っている。
ピカソ、フェルメール、ラファエロ、ゴッホ、マティス、東山魁夷……
実在する6枚の絵画が物語を彩る、極上のアート短編小説集。
女優・上白石萌音さんによる、文庫解説を収録。
(Amazon より引用)
著者紹介
原田 マハ(はらだ・まは)
1962年、東京都小平市生れ。
関西学院大学文学部日本文学科、早稲田大学第二文学部美術史科卒業。
伊藤忠商事、森ビル森美術館設立準備室、ニューヨーク近代美術館勤務を経て、2005年「カフーを待ちわびて」で日本ラブストーリー大賞を受賞し作家デビュー。
2012年『楽園のカンヴァス』で山本周五郎賞受賞、2017年『リーチ先生』で新田次郎文学賞を受賞。
(本書 より引用)
2023.10.22 読了|所有本|2023年 106冊目
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