菊と刀|読書ノート #121, 2023
読書ノート #121, 2023
■菊と刀 日本文化の型
(ルース・ベネディクト)
※ひとことPOPは書籍からの学び・気づきを想起するための個人的備忘です(^^)
2023.11.22 読了|図書館本|2023年 121冊目
読んだ理由
以前読んだ本「無敵の読解力」にて紹介されていた一冊。
GHQが占領政策のベースにした日本人論として興味を持ち、
外国人から見た日本人とは?を客観的に捉える機会として読んだ。
読後感想
自らが持つ日本人像(うまく言語化できない…)を想像しながら読み始めた。
先の大戦中から直後に書かれただけあり、
その時代の違いから理解が追いつかず、読むのにかなり時間を要した。
ただ、内容の間違いを指摘しようと思ったり、
自らの認識を書き換えたりすることを目的に読んだわけでないので
苦労しながらも読み終えたことに一種の満足感はあった。
*来日せずとも詳細な分析をまとめたことに驚く
著者は太平洋戦争中に「戦時情報局」の指示によって日本研究をはじめたが、
一度も来日することなく、文献と在米日本人の聞き取りから本書をまとめた。
現地でのフィールドワークを一度も行うことなく、
「菊」に代表する美を愛でる心と、好戦的で一本気な「刀」という
矛盾するような二面性を日本人に見出したことに驚く。
刀と菊は、ともに一枚の絵のなかのモティーフなのだ。
日本人は、
好戦的なくせに平和志向、尚武的であると同時に審美的、
傲慢にして丁重、融通がきかないくせに適応力があり、
従順なのになめたまねをされると腹を立て、
忠誠心があるくせに裏切り、勇敢だが臆病、
新しい流儀に対して身構えるくせにそれを歓迎もする
― こういう矛盾が最高度に達する国民なのである。(P.11 第一章 研究課題―日本)
この一節(邦訳にもよるが)には著者の日本人に対する敵意と畏敬、
そして文化人類学者としての純粋な好奇心とが入り乱れているようで
なんとも興味深かった。
*「各々其ノ所ヲ得」
その意味するところを真に理解できているわけではないが、
戦時中も色濃く残る封建社会の名残を象徴する印象的な言葉だと感じた。
今の時代、身分は平等といえども、
人々の中には暗に階級が存在する気がする。
社会生活に必要不可欠なエッセンシャル・ワーカーが低賃金で働く一方で、
社会生活の外周にていわゆるブルシット・ジョブで大金を稼ぐ人もいる。
また「職業に貴賎なし」で人間そのものの価値は決まらないはずだが、
学歴や経済的格差などが見えない階級をもたらし、
なかには人を見下すことで自尊心を保とうする人もいる…。
社会生活をしている以上、人は何らかの居場所があり、
そこで独自のポジションを担うことになる。
自分の役割を全うすること、他のポジションを安易に脅かさないこと、
それが現代的「各々其ノ所ヲ得」ということになるんだろうか?
そんなことを考えていると、
現代社会の窮屈さをなんとなく理解できた気もした。
*現代の日本人は…
著者が指摘するところの「恩」や「義理」といったものは
島国日本で連綿と刻んできたもので、日本人の根底に流れているものだと思う。
これまで醸成してきたものが、
今は世界との距離が一気に縮まって急激に変化にさらされ、
いわゆる欧米文化に同化してきている気もする。
その同化が良い悪いか、優劣は別にして、
かつての日本人と現代の日本人とでは、
優先すべき価値観が変わっているんだと思う。
もし著者が現代日本において、
フィールドワークを含めて日本研究を行なったとしたら、
どのようなレポートになるのか興味深い。
***
外国人から見た日本人、日本文化論という視点を得て
本書を通じて考えさせられる点が多かった。
相変わらず自分のなかで
「日本人とは…?」の解は持てていないが、
はっきりしない曖昧なところも
日本人を育む文化の特徴と考えれば、どこか親しみが湧いてくる。
それはそれとして、
自分のなかのアート的感覚を養っていくうえでも
とくに「菊」の部分、
日本人が備えているであろう「美意識」について
日本文化に触れることで感じ取っていきたい。
心に残った一節
したがって日本人は、たえず階級序列に関連づけてその世界に秩序を与える。家庭や個人関係においては、年齢や世代、性別、階級が適切な行動を規定する。政治や宗教、軍隊、産業界においては、慎重に領域が階層に分別され、そのなかでは貴賤の別なく、自身の権利の範囲を踏み越えればかならず罰を受ける。「其ノ所」が守られているかぎり、日本人は異議を唱えることなく日々を営む。安全だと感じるのだ。
(第四章 明治維新 P.117-118)
この本から得た学び・気づき・実践したいこと
書籍紹介
日本の地を踏まずに、文献と聞き取りのみにより、
数多くの事実誤認をもふくみながら、
けれども犀利に解剖され、見事に構成された日本文化の型。
文化相対主義に立つ、外なる視線からのこの日本文化像が、
内なる私たちの日本理解を、いまなお強く拘束している。
誤読にもさらされてきたこの問題の書を、その論理の神経叢までを浮き彫りにする
精確にして読みやすい翻訳で、読む・読み直す!
(本書 より引用)
著者紹介
ルース・ベネディクト Ruth Benedict
アメリカの文化人類学者(1887-1948)。
師であるフランツ・ボアーズゆずりの文化相対主義の立場から、戦時中の調査研究をもとにして終戦後に書いた日本文化論『菊と刀』は、アメリカで、また日本で巨大な反響を呼んだ。
邦訳のある著作には『文化の型』『人類主義―その批判的考察』などがある。
(本書 より引用)
2023.11.22 読了|図書館本|2023年 121冊目
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